今後注目されるであろう「GLP-1受容体作動薬」。科学的根拠に基づいた「痩せ薬」について紹介します。国立がん研究センター研究所でがん幹細胞研究分野分野長をつとめる増富先生の健康コラム。 科学的根拠に基づいた経口痩せ薬! 注目されるホルモンも 巷には、怪しい、そして効き目のない「お薬」もたくさん出回っていますが、今日お話するのは本当に大まじめに効果もあって、しかも科学的にもちゃんと根拠のあるお薬を紹介します。夢のようなお薬の話をしようと思います。 本日は、その第1弾として、「 楽して痩せられる夢のやせ薬 」! ◆インクレチンの効果 (c) 薬をのむだけで痩せることを夢見る人は多いかと思いますが、そんな時代がもうきているといってもいいかもしれません。 食事をすると、色んなホルモンや消化酵素が、腸管などから分泌されます。これは、消化管の運動をうながして食べ物を消化したり、食事で上がった血糖を下げるためのインスリンの分泌を促進するためのものです。 そのなかでも、比較的最近発見されたホルモンで、 インクレチン というホルモンが注目されています。これは、食事をすると、小腸から分泌されるホルモンで、そもそも 血糖を下げるためのインスリンの分泌 を促します。インクレチンはインスリンを分泌させてくれますので、糖尿病の治療薬として開発されてきました。そして実際に糖尿病の患者さんには薬として使われています。 しかしながら、インクレチンには意外な作用もあったのです。それは、 食べ物を胃に停滞させる作用と食欲抑制作用 なのです。この影響で、食欲が抑えられて体重が減るという効果なのです。 この思わぬ、嬉しい、効果を利用して、肥満の治療に使おうという考え方となり、 肥満治療薬 として使われているのです。最近までは、注射薬しかなく1週間に1回注射することで対応していましたが、最近になって 経口薬 も出てきましたので、痛みもありません。科学的根拠に基づいた経口やせ薬! しかも、そもそもは体内で分泌されるホルモンですから、想定される悪影響も最少限とくれば本当に夢の薬ですよね。 欧米では日本人が想像しないほどのレベルの肥満の人が多いので、実際の肥満治療薬として効果を発揮しているのも事実です。 ただ、残念ながら、 日本では糖尿病の治療薬としてしか国が認めていません ので、やせ薬として使おうとすれば、 自己負担でしか購入できません 。それでも興味がある場合は「 GLP-1受容体作動薬 」で調べてみてください、色々と情報がでてきます。 TOP画像/(c) 国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長 増富健吉 1995年 金沢大学医学部卒業、2000年 医学博士。 2001年-2007年 ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。 専門は、分子腫瘍学、RNA生物学および内科学。がん細胞の増殖と、コロナウイルスを含むRNAウイルスの増殖に共通の仕組みがあることを突き止めており、双方に効く治療薬の開発が可能かもしれないと考えている。 専門分野:分子腫瘍学、RNAウイルス学、RNAの生化学、内科学。 趣味:筋トレ
No. 18:痩せる薬のリスク 薬剤師 青木 千紘 楽に痩せる? 「薬を飲むだけで痩せればいいのに」ってダイエットをしたことがある人は思ったことがあるはずです。一般的にダイエットは食事と運動でリバウンドしないようにゆっくり脂肪を減らしていくのが健康的ですが、食事制限はつらいし、運動はしんどい。楽に痩せるには…。 痩せる薬 痩せる薬とは、食欲がなくなる、糖や脂肪の吸収を抑制してそのまま排泄する、浮腫みをとるといった作用を持つ薬をいうようです。日本では医師による処方箋がないと手に入れられないような医療用医薬品が「痩せる薬」としてネットでは紹介されています。海外ではサプリメントみたいに売られていて、入手は簡単です。 薬のリスク 薬剤師として痩せる薬をみると、全くおすすめできないものばかりです。期待する作用がある薬には必ず副作用があります。痩せることとは無関係に肝臓や腎臓が悪くなる、電解質異常を起こすなど痩せる薬によって病気になるかもしれません。そんなリスクがある痩せる薬をのみますか? 利尿作用 浮腫みをとる薬は、心不全や腎不全などで体や臓器が浮腫む症状があるときに使う利尿薬です。浮腫みの原因になるナトリウムやカリウムという電解質を主に排泄することで尿量が増えます。この利尿作用は、ナトリウムを体に入れないようにする減塩の食事療法でも同じような効果が期待でき高血圧の予防にもなります。 ダイエットは姿以上に、努力した自分自身も綺麗にするものです。痩せる薬に頼らずお互い頑張りましょう! クスリの あ・れ・こ・れ ~東葛病院~ TOPへ戻る≫